山頂記録2018.8.26

8月26日 am7:00
気温 : 12.1°c
風 : 強い
視界 : 30m
風が心なしか収まったような、そうでもないような。時折雨交じりの突風とガスの山頂。このまま雨が降り続く予報。

オープンは確か22時。
ダンスが何組かとライブは自分達だけ、
ショータイムは0時スタート、
高校生だったから酒を飲むわけでもなく、
ただ流れる音、
小さなミラーボール、
ブラックライト、
その全てに興奮する自分を、緊張だけが冷静にさせ、その空間の記憶をいつのまにか脳裏に焼き付けていたらしい。

それは緊張していたと思う。

観客という程の客はなく、周りは顔見知りや秋田市から呼んだダンサーの仲間たち、何かイベントをやっているからといってクラブパーティーに遊びに行こうとする一般客などいない、そんな時代。

でも自分にはそんな事は関係なかった、緊張しながらも、最初で最後のたった一度のライブに集中していた。

時間になり先輩のMCから始まるショータイム、曲がかかり紹介されて先輩の横に並ぶ。自分の聞きなれない声がスピーカーから大音量で流れ、なんとか間違えずにワンバースを終え、リハーサル通り任されたコールアンドレスポンス(お客に一斉に声を出させ盛り上げる)でまさにその場の主役のようなつもりを味わいながら、せいぜい10分程度の出番を終えた。
終わってほしくなかった。
ずっと歌っていたかった。

初めてマイクを握る私に皆優しかった。
かっこよかったよと仲間が声をかけてくれた。
褒められた事を素直に喜べるほど子供ではなかったが興奮はもう隠せなかった。

なんだったんだ今のは

それは、それまでいくつかこなしたダンスショーとは全く違う感覚。
自分だけの声が会場中に響き渡り、ほんのひと時、確かにそこに居た全員が自分の声を音楽として聞いていた。
確かにその瞬間だけは、自分だけの世界が在る、という事を感じる事のできた貴重な経験だった。
その日はいつになっても眠くならなかった。
夜が明けて、
パーティーは終わり、
外に出ると、
何も変わったはずのない見慣れた自分の町は、まるで別の世界のように思えた。

なんだこれ。

新聞配達が町中に新聞を届け終わる頃、いつものように自転車で家に帰る。
その途中、
次のライブはこうしたい、
次はこんな曲を書きたい、歌いたい。
そんな事をずっと考えていた。

つづく。