山頂5時晴れ
気温10.0度
風弱い
視界良好
2019.8.18
不自然なくらいすっかり秋、下界にいては気づけないこのお盆を境目とするくっきりとした季節の切り替え。
2010年山小屋管理人一年目の時、私は30歳だった。
男は30からという言葉通り様々な区切りの年となり、その大きな転換期の流れの中で鳥海山山頂小屋管理人の仕事が始まったと言える。
29年間自分の好きなように生きたという自負がある。何か大それた事をしたわけではないが自分の為だけに生きていたような気がしていた。
30歳になった私はもういいや、と思った。
これまで自分の好きに生きてこれたのは、言わずもがな周りの家族や仲間のおかげだった。
自分の為には充分生きた、もう誰かの為だけに何事も選択して生きてみてもいいと決意していた。
誰かの為に仕事をして、誰かの為に詩を書いて、誰かの為に歌を歌う。
誰かの為に生きる人生。
そう心に決めるだけですでに最強だった。
自分の為に生きたこれまでが馬鹿馬鹿しくなるぐらい。
もう何かを求める必要も、誰かと自分を比べる必要もない、勝つ必要もなければ争う必要すらない。
私は30にして自分というものを手放した。
つづく。