山頂5時半 ガス
気温11.0度
風 弱い
視界50メートル
雨はあがるも山頂は深いガスの中、午後には青空が見えるか。
2019.8.21
〜さかなやさんと俺エピソード3〜
神社の職員と山小屋管理人などのスタッフ用に1人1セットの布団が用意される。
下の神社の宿泊施設のもので毎年ヘリコプターであがりそれぞれ配られた。
何故かその布団にはタバコの火で空けられた穴がいくつもあった。
誰のどの布団にも穴が空いていた。
名前が書いてあるわけでもないから、毎年違う布団を誰かが使う事になる訳だが、その犯人はただ1人だった。
ある日晩酌の後、寝床のある小屋でさかなやさんと向かい合って話していた。その小屋の二段ベッドの下がさかなやさん、上が私の寝床という仕様で、さかなやさんは布団に横たわり片肘をついてタバコを吸いながら私に何かを話しかけ続けていた。
私はその向かい側に座り本を読んでいる。
彼の話は一切聞いていなかったがなんの問題もない、どうせ本人も明日には何も覚えちゃいないのだから。
話は暫くつづく、義理堅い私は、2分に1度まるで機械のように無機質な返事をした。
それで彼は満足なのだ、私もすっかり本に集中できる。
だんだん彼の話が途切れはじめ気になってふと彼に目をやった。
彼はタバコを加えたまま完全に目を閉じて今にも自分の腕から顔を落としそうになっていた。タバコはすでに半分以上灰になっていて奇跡的に元のタバコの形を留めていた。
下には今年上げたばかりの真新しいシーツの布団、急いで灰皿をタバコの下に持っていくと、待ってましたとばかりに力尽きた灰がドサッと灰皿におちた。
このままこの小屋で暮らしたらいつか火事で死ぬかもな。
と思った。
つづく。