山頂6時晴れ
気温8.0度
風 無風
視界良好
綺麗な影鳥海、天気は今日まで持ちそう。
2019.8.27
〜誤算シリーズ2〜
私は山にただ詩を描きに来た。
普段の生活から離れ、街中ではおよそ出会えない壮大な景色、環境の中で暮らし、その世にも美しい光景の本質をじっくりと見極め、音に、詩に、言葉にしていく。
それはそれはさぞかし立派な詩が書けるのではないかと期待した1年目の終わり。
詩は全くと言っていいほど書き残すことは出来ていなかった。
えっ?
なんで?
何しに来たの?
正直、焦った。
ミュージシャンとしては、夏といえばまさに所謂かき入れ時、全てのライブのオファーを断り、閃きをすぐに形にできる音源や録音の製作環境を泣く泣く手放して山に来ているのに!
なんで!
なんなの?
なんでなのよ!
もう、このままオネェタレントにでもなるしかないような事態だった。
目の前に広がる非日常的極日常は、人間のちっぽけな美への感覚など簡単に凌駕して、お前ごときが語る事など何も無いと言われている様だった。
そしてそんな自分の無力さに気付かされると同時に、一体自分は何を描きたかったのか?
そんな初歩的で根本的な問いにたどり着いた。
これが分からなければ何もかけない。
何かを描きにきて、何も描けなくなった。
そんな一年目の山小屋生活であった。
つづく。