山頂6時ガス
気温 7.2度
風 弱い
視界100メートル
山頂はガスの中だが明るい、今日から3日間ほどは晴れる予報。とにかく急に寒すぎる。
2019.8.25
〜さかなやさんと俺forever〜
さかなやさんは酒が好きだった
さかなやさんは酒を呑むと誰とでも仲良くなった
さかなやさんは酒を呑んで毎晩記憶を失っていた
さかなやさんはそれでも毎日好きなの酒を呑んだ
そしてある年の夏の入り口、また3ヵ月の山小屋生活が始まるというその直前に、さかなやさんは亡くなった
その1年前から彼は山頂小屋勤務を卒業し御浜小屋の管理人となっていた
御浜小屋での勤務は彼の兼ねてからの希望だった、それが一つの彼の夢だった
さかなやさんは夢を叶え、そして逝った
寝ぼけてタバコの灰で良く布団に穴をあけた
深酒の末に朝仕事の時間を寝過ごすこともよくあった
さかなやさんはとにかく仕事のできない男だった
そして山小屋の仕事が好きだった
誰のことも怒らず誰ともけんかしなかった
さかなやさんは言った
「山でとにかくやっちゃいけない事は怒ることだ。山ではけんかしてはいけない」
彼は最低限の自分の仕事をまっとうした、とはけしていえなかったが
昼間からこっそり酒を呑んでよく怒られていたが
けして人とケンカせず
沢山の人々から愛されていた
彼が亡くなってから何年も経つが、今日も夜の晩酌の席ではさかなやさんのエピソードが誰かの口から語られ、笑い合いその場を和ませている
漁師だった彼は、山では「さかなや」と呼ばれ、死んで彼を知る者達の永遠の酒の肴になった
生前、彼に自分には小さいからと言ってモンベルのフリースをもらい、それが私にとっての彼の形見となった。
右の袖付近にはタバコの火で溶けた穴が空いている。
終わり。