山頂4時30分 晴れ
気温14.3度
風 無風
視界良好
2019.8.4
〜今から10年前、私はただの詩人と自分の存在を位置づけて生きていた。
詩人として産まれ、詩人として死ぬものだとしか自分の人生の意味を知らなかった。
詩を描くために目覚め、飯を食い、眠った。
詩を描くために人付き合いを好み、他人をできるだけ理解しようと努め、自分とは何者かを追い求め、詩を描く為に恋をして愛を探した。
「山に住めば、それはたいそういい詩がいくつも生まれるかもしれない」
そんな出来損ないの詩人の不純な動機がきっかけとなり山小屋の管理人の仕事にたどり着いた。
もちろん、詩を描くために生きていたのだから、生きるために必要な金の稼ぎ方は、いつも詩を描く為の何か、という事を中心に選択されていたし、むしろ詩を描く為になるならトイレの掃除夫でも総理大臣でも職種はなんでも良かった。
まず、
そんな仕事がこの世に在るという事を知っていたのには、かつて山小屋管理人を何年か経験した少し上の先輩にあたる友人が近くにいた事と、彼との山にまつわるエピソードを語るしか説明がつかない。
10年前からさらに3〜4年さかのぼることにする。
続く。