山頂6時くもり
気温 8.8度
風 強風
視界100メートル
風は強いが明るいところを見ると雲は薄い、今日はいずれ晴れ予報
2019.8.24
〜さかなやさんと俺エピソード5.5〜
青年はすでに結構呑まされて酔っているようだった。
さかなやさんはまさに絶好調、完全に無敵無敗の王者の如く、その若者との夜のセッションの主導権を握り、心ゆくまで我が家でくつろぐがよいぞと持て成そうとした。
青年は「もう呑めないっすよ」と断り、「まぁまぁ遠慮するんじゃねー」と酒を注ぐ、そんなやり取りの中、何がどうなったのか、さかなやさんはその青年の事を「まなぶ、まなぶ」と私の名前で呼び始めた。
「んでな、まなぶ」
「いやいや俺まなぶじよないっすよー」
「そしたらな、まなぶ」
「だからまなぶじゃないっすよー」
私は早く寝つきたかったが、このやり取りにさすがに吹き出しそうになり、それをやっと堪えて寝たふりを突き通しながら夜は更け、いつのまにか寝てしまっていた。
次の日の朝、誰かが部屋を歩き回る音で目が覚めた。
朝の4時すぎ、朝仕事開始の時間。
部屋の真ん中には一応布団が敷かれていて昨日の青年が寝ていた。
その周りをぐるぐると歩きながらさかなやさんが不思議そうに青年の顔を覗き込んでいる。
2段ベッドの二階から話しかけてみた。
「何してる?」
すると、さかなやさんは一度こちらを見てこう言った。
「まなぶ、これ、誰だ?」
えっ?と一瞬びっくりしたが、朝っぱらから昨日の一部始終をその場で説明する気にはならなかったので、
「俺の友達だ、気にすんな、仕事行こうか」
と言って部屋から連れ出した。
彼は良い酒呑みだ。
彼は酒を呑むと誰とでも仲良くなった。